2017年2月13日月曜日

ノーム・チョムスキー 「メディア・コントロール」-正義なき民主主義と国際社会

 ノーム・チョムスキーは「知の逆転」(NHK出版新書)でその存在を知った言語学の泰斗、「巨魁」である。その業績をウィキペディアから一部引用すると

1992年のA&HCIによると、1980年から1992年にかけてチョムスキーは、存命中の学者としては最も多く、全体でも8番目に多い頻度で引用された。彼は人文社会科学諸分野における「巨魁」と表現され、2005年には投票で「世界最高の論客」 (world's top public intellectual) に選ばれた
チョムスキーは「現代言語学の父」と評され、また分析哲学の第一人者と見なされる。彼は、コンピュータサイエンス数学心理学の分野などにも影響を与えた。

 そして反体制派知識人的な範疇で括られてもいる。むしろこちらの方で世界に名を馳せていると言っても外れてはいないだろう。本書は現代政治で果たしてきたメディアの役割を断罪し、事実をもとに現代社会の政治構造を理解することを、たいへん解りやすく、アイロニカルな論調で(この辺がアメリカ人っぽいところ)記述されている。

 本書を読んでいるかたわらで、折しも安倍トランプ会談が、ワシントンとフロリダで行われているが、トランプが既存メジャー・メディアに信を置かず、もっぱらツイッターを多用しているのも、表面的には大統領選挙戦を通じてのメジャー・メディアへの”意趣返し”と捉えられなくもないが、もっと深読みをすれば、チョムスキーが言わんとしている論点を本能的に理解していた、と言うと褒めすぎか。

 日本の主要メディアにおいても、本書の論点は充分当てはまる。いかに「中立・中正」を標榜しようが、本質的にはチョムスキーが理想とする「公正なジャーナリズム」とは言い難いのではないか。