2016年10月22日土曜日

目黒シネマという映画館

 権之助坂を上って目黒駅西口に折れるその手間に「目黒シネマ」という、この界隈唯一の映画館がある。昔は自由が丘駅近くに「武蔵野館」というのがあって、足繁く通っていた時期もあったが、目黒シネマが目黒区に残された最後の1館だろう。むろん封切館ではない。二番館というのか、三番館というのか、そういう類いの映画館である。

 とある日、目黒駅前でどうしても数時間潰さねばならない事態が出来したことがあった。駅ビルの上の商店街をのぞいたりしたが、そうそう時間が経つものではない。そこでバスの窓からときどき目にしていた目黒シネマを目指した。通りの掲示板に上映中の映画が二本紹介されている。とても自分の選択肢には入り得ない映画だった。
 一つが、堺雅人主演、香川照之、広末涼子出演の「鍵泥棒のメソッド」、もう一つが朝井リョウ原作の「桐島、部活やめるってよ」。掲示板をにらみながら、そうとうの時間悩んだ。入るべきか、入らざるべきか、。やめるにしても、まだ数時間潰すあてがまるでないのだ。面白くなかったら、途中で出ればいいや、と肚を括り、地下への階段をとぼとぼ降りていった。

 自販機で入場券を買い、入れ替えを待って場内に入った。ほぼほぼ満員になったのである。意外だった。そして意外ついでだったのは、私と同じような時間潰し族と思われる、カバンを抱えた若いサラリーマン風の男が多かったことである。

 映画は二本とも面白かった。これもまた想定外だった。うっすら満足感すら感じた。階段を上がって通りに出たとき、すでに待ち合わせの時間の10分ほど前、。ちょうどいい時間潰しになったのだ。味をしめた私はここに何度も足を運んでいるが、いまだスカには当たっていない。上映する映画をセレクトしている人の目が確かのだろう。

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